2月はいろんな仕事があって、遅れ遅れになっていましたが、18bit ADCボードの設計がようやく出来上がりました。
このボードは、真の18bitの性能を広く世に普及させるために生まれました。適当に作ったのでは決して18bitの性能は出ません。このボードは3か月間、検証を重ね、ノイズを減らす工夫をしてきました。
真の18bit 2Mspsの性能と、最新FPGAでのディジタル信号処理が融合したとき、きっと新しい計測の世界が開けるでしょう。
18bitA/Dボードの再設計
2014.02.10
これまで約2か月間、検証を重ねてきたAD7986 18bit ADCボードは、
- 1LSB=約30uV。ノイズは1.5LSB程度(A/D変換器自体の性能)。S/N比は約100dB。
- 可変ゲインプリアンプを1000倍に設定にすれば、1LSB=約30nVまで可能。
- プリアンプ部のひずみ率は-95dB以下。
- サンプリング周波数は2MHz
という性能が達成できました。
機能としては、
- FPGAに直接取り込んでフィルタリングなどのディジタル処理が可能
- USB2.0またはUSB3.0インタフェースで取り込み可能(ソフトウェアも付属)
- 低消費電力
これまでの検証結果を反映するべく設計をやりなおしています。
改良点は以下のとおり。
- アナログの差動信号を受け入れられるよう、ゲイン可変差動入力OPアンプを追加
- ADCの入力に過電圧保護ダイオードを追加
- ADCに与える差動入力のコモン電圧を2.5Vにする
- DAC出力のOPアンプの接続方法を変えて、-2.5~2.5V出力可能にする
- 絶縁型バッファを取り除き、普通の2電源バッファに置き換える
- 基板の層数を4層にする
- アナログ入力の入力抵抗(50Ω)を、ジャンパでON/OFFできるようにする
- 電源IC(LT3439EFE)のGNDをつなぎ忘れていた問題の修正
- 2.5V電圧リファレンスの出力にOPアンプを追加(ただしジャンパ可能)
月曜日に1日で再設計できるかな・・と思ったのですが、とても無理でした。
水曜日に出図をし2月中の発売を目指します。価格は約6万円を目指します。
1000倍の可変ゲインアンプを18bit ADCにつないでみる
2014.02.02
AnalogDevicesからAD8253ARMZという可変ゲインアンプが出ています。
AD8253ARMZは、差動入力のインスツルメンテーションアンプで、ゲインはx1、x10、x100、x1000と、プログラマブルです。ゲインの変更はA0とA1という2本のディジタル信号で設定するようになっています。
計測用のADCを作っているので、ゲインはやはり可変であったほうが良いので、このアンプを18bit ADCにつないでみることにしました。
このように秋月のピッチ変換基板を用いて実装し、数cmの配線を引き延ばしてつないでいます。拡大すると、
こんなふうになっています。
さて、さっそくゲインを1000倍(+60dB)にして無信号時の波形を取ってみました。
約50mVの振幅で揺れています。ゲインが1000倍なので、この元の信号は50μVだったはずです。実は、これはスイッチング電源から飛んでくるノイズです。
ゲインを変えて周波数解析してみると、ピークの周波数は40kHzくらいのところにあることがわかります。ゲインを1000倍(+60dB)にしてもそれほど大きなノイズは見えてきません。
ゲインx1のときには50μVくらいのノイズがもともとあって、それは18bit ADCでの約1LSBに相当します。ゲインx1000にすると50mV(1000LSBくらい)くらいと考えるとつじつまがあいます。
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50μVくらいのノイズがもとからあるのでは、1000倍する意味がありません。OPアンプの熱雑音もそれくらいなのですが、あきらかに特定の周波数で来ています。したがって、このノイズを減らす必要があります。
ピッチ変換基板を空中配線でつないでいるのがノイズの原因かもしれないので、電源にOSコンデンサをつないだり指で押さえたりしていたら、
1000倍増幅後のノイズの振幅は15mVくらいまでに減りました。周波数解析をしてみると、40kHzの成分は-83dBくらいにまで減りました。FFT解析しても際立ったピークが見えているわけではなくなりました。
つまり、このスイッチング電源からのノイズはおそらく空間を飛んできているのであって、適当につないだリード線が拾ってしまっているのでしょう。だから基板をしっかり作れば削減可能と思われます。
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AD8253ARMZは大変すばらしいアンプなのですが、4つほど欠点があります。
- ゲイン1では電圧換算ノイズが40nV/√Hzもある。これは18bit ADCの1LSBに相当する。ゲイン10以上では10nV/√Hzと小さいが。
- ひずみ率は-110dBと書かれているが、データシート上のグラフでは-87dBくらいに見える。よくわからない。
- せっかく差動入力なのに、出力はシングルエンド
- 入力バイアス電流はGNDに逃さなければならない。浮かせていてはいけない。
なので、現在採用しているOPA211AIDRのほうがよさそうです。ただ、ゲイン可変というのは魅力的なので、OPA211AIDRとAD8253ARMZを両方のせるのが良いのかもしれません。
- 低ノイズ・低ひずみの測定をしたいなら、OPA211AIDRを使う。
- nVオーダーの測定をしたいならAD8253ARMZで増幅しておく
- 高インピーダンスの差動入力にしたいならAD8253ARMZ
- 低インピーダンスの差動入力でよいならTHS4521
こういったのを選択できるような回路構成が良いのか・・
ただ、18bit ADCの分解能は30μVなので、これをADCボード上で1000倍に増幅して30nVが見えるかというと、それは難しいと思います。nVオーダーを測りたいなら、センサ側であらかじめ増幅しておくべきだと思います。
うーん、悩ましい。
状態変数型の発振器と18bit ADC
2014.02.01
今週の水曜日に、優秀なスタッフが状態変数型の発振器をサクッと作ってくれました。
18bit ADCの特性を見てみたいと思ったときに、市販のDDS型のファンクションジェネレータではひずみが大きいので、正弦波発振器がほしかったのです。
そこで、「トラ技などのバックナンバーを見て作って」と頼んだら、わずか半日で作ってくれました。いつも予想よりも短い時間で作ってくれます。
それを今日、ようやく試してみることができました。
上の写真の左下に映っているのがその発振器です。電池で動きます。
これはトラ技2003年7月号に乗っていた馬場清太郎さんの記事の回路を作ったものです。馬場さんの記事ではNJM4580だったので、周波数が1kHzで設計されていました。
今回は20kHzで発振させたかったので、周波数特性がよさそうで秋月で売っていたLME49860を選び、定数も計算しなおして変更したとのことです。
まず、オシロで見た波形。綺麗な正弦波に見えています。
ただし振幅が8Vもあります。もともと馬場さんの回路のとおりなのですが、ちょっと大きすぎるので、減らしました。
ADCで取り込んだ波形がこちら。
2.4Vくらいに減っています。そして、これをFFTすると・・
なんと、基本波の-26dBに対して3次高調波は-123dB。5次高調波も-123dB!!
97dBも下がっています。-97dBcということなのでしょう。
馬場さんの記事では『8VRMS出力時のひずみ率は0.0005%です。』ってさらっと書いてあるので、理想的には-100dBというわけです。無調整でそれに近い値が出ているのはすごいと思います。FETの最適な動作点を探したり、コンデンサやOPアンプを取り換えていけば達成できるかもしれません。馬場さんの回路すごい。
で、この0.0005%という値がどこから出てきたのかということなのですが、NJM4580のデータシートには1kHzでのひずみ率が0.0005%というグラフが描かれているので、おそらくその値なのでしょう。
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ひずみが、発振器によるものなのか、ADCボード上のプリアンプなのかを切り分けるのが大変です。
今回の回路で発振器に使ったLME49860のひずみ率は0.00003%。なんと-130dBcです。
ADCボードにはOPA211とTHS4521という2つのOPアンプが乗っています。OPA211のひずみ率は、負荷が軽ければ-130dBくらいです。だから無視してよい。THS4521の3次ひずみは、20kHzでの規定は書かれていませんが、おそらく-110dBcくらいだと思います。
だから、得られた-97dBcという性能が、発振回路の問題なのか、THS4521によるひずみなのかはわかりまりません。
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ちなみに、発振器を外した状態ではこんな感じなので、同軸ケーブル等が特にノイズは拾っているということはなさそうです。
オーディオマニアの人が低ひずみの発振器をこだわって自作する気分が少しだけわかりました。
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P.S. あらためて2003年7月のトラ技を読み返してみると、昔のトラ技はめちゃくちゃ面白い。今のも面白いけど。
P.S.2 OPアンプの出力にLPFを入れてからADCボードにつないだりすると、逆にひずみが増えた。軽い負荷で動かすのが良いみたいだ。
















